窯元×蔵元×地元=地の盃
2014年の夏の終わりに、当時佐賀県の有田焼創業400年事業の一つとして立ち上がった「酒器プロジェクト」への協力を呼びかけられたのが最初のきっかけでした。2016年に創業400周年を迎える有田焼を記念して、公式には17のプロジェクトが立ち上がり、官民一体となって2013年から2016年までを駆け抜けた一大事業でそのうちの一つが「酒器プロジェクト」でした。
光栄なことに、ここまでのキハラさんとの取組や、STYLE STORE時代からお付き合いのあったPromoductionの浜野さんが佐賀県窯業技術センター特別研究員に就任されていたご縁等もあり、佐賀県よりプロジェクトのお手伝いをさせて頂く機会を頂戴することとなり、当初は2014年から商品開発に先駆けてスタートする事前準備としての勉強会の「市場調査:商品コンセプト開発」と「プロモーション:プロモーションの手法・実例」の講師だけを務めさせて頂く話だったかと思います。
そして時は流れ、いよいよ本格的に商品開発に取り掛かる段階でもう一度、佐賀県から相談を受けました。詳細な記憶は既に曖昧なのですが、そこでお伝えしたのは、
「行政の補助事業とは言え、支援期間が終わった後も民間で自立して事業継続ができるようにすべき。
その為にも、プロジェクトのコアに地元ベースで活動する窯元や蔵元の目線に合わせてフォローできる人材を起用すべき。」
といった趣旨の意見をさせて頂いた事を覚えています。
公的な資金投入をどう行うかに関しては色々意見や議論もあるかと思いますが、私としては可能性や熱意はあるが民間単独資本でスタートするにはリスクが高かったり、成果について公共性が高かったりするものに関しては行政が戦略的に公的資金を投下する意味はあると思っています。ただ、税金を投資するわけですから、そこに暮らす人達(納税者)にメリットが必ず還元されなくてはいけません。
たった数年で順風満帆な事業が立ち上がる可能性の方が低いわけで、行政の立ち上がりにおける支援期間を終えた後も、どう民間で自立運営が出来るか、その事業が一民間資本だけでは起こり得ないシナジーを出せているかどうかが一つの成果指標だと思っています。
話を元に戻しますが、このような流れで酒器プロジェクトでは黒髪企画室の鷹巣さんがブランドディレクターに就任され、私や浜野さんが鷹巣さんをサポートすると言う形で商品開発/完成披露/販売促進のフェーズに入っていきました。本当に様々な議論や紆余曲折を経たものの、最初に鷹巣さんから
「地の盃」
のコンセプトが提言されたときに、酒器プロジェクトとして進むべき道がクリアに定まったと感じた事を今でも覚えております。2014年に勉強会に費やした時間をしっかりとブランドコンセプトに昇華させて、かつ新商品としても開発するに足りる新規性のあるテーマを持たせつつ、ブランドを育成していく事で長期的にも地元の収益にしっかり結びつく。県外の人間からすると有田焼と佐賀の日本酒に恵まれた当地ならでは、ちょっと羨ましいコンセプトだったりします。
2016年の400周年を迎えた際には、東京でも様々なプロモーションを行い、多くの方に地の盃と佐賀のお酒を楽しんで頂きました。県としての事業が終了する際に、地の盃に関しての売上の報告を受けた際には「小売の実績がしっかりと出たプロジェクトであった」とお伺い致しました。これも鷹巣さんが中心となってプロジェクト参加事業者の皆さんと一緒に産地の背景を踏まえた流通の体制までしっかり構築した成果だと思います。そしてその甲斐も有り、補助事業の支援期間が終了して4年の年月を経た今でも地の盃はプロジェクトとして継続的に活動を続けています。
最近、黒髪企画室の鷹巣さんとお話しする機会を得たのですが、地の盃の新作に関して企画を温めていらっしゃるそうです。ひょっとするとまた一緒にお仕事をするなんてことも起こるかもしれないなと、楽しみにしている次第です。
記事情報:
Arita episode2 -有田焼創業400年事業- (英語サイト)