シンガポールで改めて感じた、日本のものづくり事業者が海外で成功する為のポイント
◆2026年最初のシンガポール訪問
KCmitFとして2026年度最初の海外出張は、事業の始まりの地とも言えるシンガポールとなりました。ここ最近の記事で触れておりましたSupermamaの新事業、weareSuperの基幹施設が2025年12月に正式オープンしたことを受け、KIHARAさんと一緒に、その視察と今後の事業やコラボレーションについて打ち合わせを行なう為の訪問です。

◆weareSuperの旗艦店がSG ENABLING VILLAGEにOPEN!
数年間に及ぶ企画と準備を経て遂にオープンしたweareSuperのフラッグシップ施設は、disable(※1)の方々がより良く社会で生活することをデザインの力で支援する施設です。その為、シンガポール政府が管轄する複合施設、ENABLING VILLAGEの一角に位置し、新たに建設された建物の内部のワンフロアをそのまま一つの広大な空間としてデザインし、ロケーション毎に様々な意図や機能を持った機能が配置されています。(※weareSuperのコンセプトについては以前のジャーナルに詳細を書いておりますのでこちらを参考に)。

(※1)disable:日本では今でも”障害者”という表記が一般的かもしれませんが、英語では一般的な表現としてdisable(ディスエイブル)を使用します。ニュアンスとしては何かしら出来ない事があると言うような意味合いです。先天的だったり後天的だったりの理由で、そういった状態にあるという事を表現しています。
さて、昨年の9月に訪れた時はまだスケルトンに内装が入った状態を特別に見せてもらいましたが、什器以外はほぼ空とも言える状況でした。今回はその空間に魂が宿った印象を受けました。その結果のカラフルさはとてもシンガポールらしく、その空間デザインにおいてもSupermamaで十数年に及ぶ店舗経営の中で培ったノウハウが活きていると感じます。Supermamaの移転にまつわる歴史はシンガポールの不動産事情を特徴的に表しています。シンガポールでの不動産賃料は契約更新時に大きく変動します。人気の店舗であればあるほど賃料の上昇幅も大きく設定されるのですが、Supermamaはその高くなる家賃に妥協するのではなく、都度都度店舗を移転して来ました。ですので、ざっと思い返してみるとこの15年で15店舗ほどをオープンし、その度に内装設計をして来たのではないかと思います。そんな経緯をEdwinとMeiling(夫婦でFounder)が笑いながら、「結果この経験と実績があってこそ、weareSuperの空間設計コンセプトが生まれ、実現し、機能している」と話していました。

施設の案内を受けながら自分が一番印象を受け、励みになった言葉はEdwinの「変えようとする意志が、それを変える」という言葉です。ENABLING VILLAGEは政府の福祉関係施設でもありますので、weareSuperの建物は行政管轄の建物です。その内装の企画に関しても、デザインの力で社会へのコネクトを促進すると言うコンセプトを、現実の空間で体現する為に交渉を重ねていくことは並大抵の事では無かったそうです。足掛け3年ほど設計や内装に関して幾度も協議を根気強く重ね、現在の空間構築を説得したとの事でした。公共施設に良くある、無難な判で押したような空間でなく、disableの方々とクリエイターが可能性を共に見出し社会参画をする場を目指し、「変えるべきを変える」という強い信念と意志で交渉を続けたエピソードの中で冒頭の言葉が出て来ました。
私も日本で様々な産地に訪れながら、そこでのものづくりの環境が大きく変容し、もはや民間事業者だけで解決できることの範囲もかなり限られてくる実情を目の当たりにします。そんな状況の中で、社会資本としての日本のものづくり産業や文化を次世代に向けてもう一度再興していく為には、官民一体となって、ビジョンから日本のものづくり環境を設計・整備していく必要性を強く感じています。
ただそれを実現していけば、日本のものづくりの価値はそれを必要とする人達へ今まで以上に届く様になり、そこから生まれる新しい出会や機会によって、その将来価値をさらに高めることが可能です。まだまだやり方によって国内外の市場に対して、影響力や存在感を高めていく可能性を大きく秘めていると思っています。その為のUpdateをものづくり業界全体で図り、日本の産業の基盤としてもう一度足腰を強くしていく事を目指す私としては、Edwinの言葉は何よりも励みになるものでした。

◆改めてKCmitFの海外展開支援の強みや特徴を整理してみると…
ものづくり事業者が海外展開をする事で得られることは、売上Upだけではありません。特に日本以外の異なる市場、環境に対し必然的に目を向けることになりますので、自社の本質的な価値を見つめ、事業を継続もしくは成長させる為の重要な「視点」を得られる事が、一番大きな収穫だと思います。その視点を経営やものづくりにすぐに活かせ、時間をかけて更に鋭く磨くことで長期的にものづくり事業経営の大きな支えとなっていきます。これまでの沢山の海外展開支援の伴走の中で、実際に私が見てきた経営者や職人の変化から確信している事です。
もう少し視点について説明すると、二つの視点が得られることがわかります。海外クライアントの外国人の視点を知る事が出来る事は勿論(一つ目)、自分自身が海外に出て自社や産地、日本の市場を客観的に見つめる事で国内にいる時とはまた異なる発想が必ず出てきます(二つ目)。
それをまた行動に移し、結果をレビューする、そこでさらにまた異なる発想が生まれ、再度チャレンジする。この繰り返しを続けていくと、初期こそ全方位的なトライ&エラーを繰り返すアクションが必要ですが、自ずと自らの真の強みに準じた一点突破型に収斂していくようになります。そこが見えるようになれば、あとはターゲットごとにカスタマイズは勿論しますが、戦い方や武器は基本的にシンプルになっていきます。
実際にKCmitFにおいてもこの「視点」の違いを伝え身につけてもらう事で、産地や事業者のポテンシャルを正しく引き出し、それを自立的にサスティナブルに次の世代に繋ぐ仕組みをインストールする事を一番の重要視しています。その過程において海外展開の一専門家として、通訳だったり、海外バイヤー/クリエーター招聘、新商品開発、海外でのプロジェクト企画/運営を伴走メニューとして提案・実行致しますが、それはあくまでも産地や事業者が目指すゴールに向かう中での一つのプロセスなのです。加えて海外ゲストが日本の産地を訪問する際にもKCmitFはアテンドし、ゲストの視点に応じた適切なガイドや、それぞれの視点からの意見交換を通じ相互理解の円滑な促進を支援致します。
こういった長期的な課題解決やプロジェクトにおいてKCmitFが大切にしているポイントは、
・ターゲット市場をローカルカルチャーレベルで熟知しているかどうか?
・ターゲット市場に、私たちの目的を理解し同じ様な熱量で協力してくれるパートナーが存在するか?
です。市場への理解度はそこへ居住する事や渡航の回数、そこで接したローカルの人達によって培われます。例えば海外駐在経験があっても、日本人コミュニティとの接点ばかり多かったりすると、そのフィルターを通じた理解になり、本当の現地の感覚での解像度が高まりません。また現地の人と接する時間が長くても、我々の業界や市場を知る人かどうか?でビジネスに対しての解釈も異なってくるので、現地の人であれば誰でも良いと言うわけでもありません。
現在KCmitFでは、
シンガポール:経済成長著しいASEAN市場の中心地
パリ:欧州市場でも最も日本の感性価値を理解するマーケット
台湾:外国の中では日本と最も近い感覚で望める市場
上記の3エリアを得意なテリトリーとしています。この記事を書くにあたって改めて調べてみたのですが、開業して事業が本格化した2013年から昨年までのKCmitFの業務による海外渡航は累計約100回程で、コロナ禍により渡航出来なかった2年を除いて計算すると、毎年約9回は海外出張していた計算となります。そして、これらの半分がシンガポールへの渡航で、次に欧米、台湾と続きます。

数を重ねてきたことによる現地市場への理解度・解像度の高さは勿論として、全ての渡航ではそれぞれのパートナーを必ず訪れ、協議を積み重ねてきていますので、この間に培われた経験と信頼関係により高度で難易度の高い企画をスピーディーに実行できる強みがあります。また各国のパートナーとはそれぞれ8年~14年の継続的な付き合いがありますので、長期伴走支援においてもお互いがすべき事、自治体や事業者様をどう支援すべきかも熟知している強みがあります。

課題に応じたレクチャーは勿論、予算に応じたプロジェクトの設計から、デザイナーなど信頼出来る専門家の紹介迄幅広く対応しておりますので、「海外市場」にチャレンジしたいものづくり事業者様、公的支援機関、自治体の皆様はお気軽にお問い合わせください。海外市場への挑戦を通じて一つ一つの成功体験を積み上げ、日本のものづくりの明るい未来を一緒に築ける様な、そんな志を共に出来る方と一緒にお仕事をしたく思っています。

